やすぴか日記

日常の出来事と過去の思い出の記録

「ほんとうの定年後」から思うほんとうのこと

 「ほんとうの定年後」(坂本貴志著 講談社現代新書)を読んだ。

 この本は、私のような定年間近の人が読む本なのだと思うが、違う視点から見れば、そうでない人も読むべき本であるかもしれない。

 「はじめに」に書いてあるとおり、「本書の目的は、定年後の仕事の実態を明らかにすること」である。

 「定年前のキャリアがどのようなものであっても、定年後に就業者の多くが、無理のない仕事と豊かな生活を両立させながら、幸せに暮らすことができているという事実」を、統計データやインタビューに基づいた事例から実証している。

 私が考えている定年後の仕事の考え方と似たところがあり、少ない賃金でもいいから、身近な場所で無理のない仕事ができれば良いと思っている。

 しかし、さらに著者は少子高齢化による人手不足の中での、今後の経済社会のあり方も言及する。サービス業などは、競争の中で「過剰とも言える高品質なサービスを低賃金で働く一人ひとりの労働者の献身によって成立している」ため、これからは「消費者優位」の環境から「働き手に優しい」環境に転換させていくべきだと主張する。

  たとえば消費者は、ネットで注文した商品は集配所に取りに行くとか、外食店の下げ膳や上げ膳は自信でやるなどの提案をしている。

 それはそれでよいのであるが、日本人のサービス精神は、他国に誇るべき気質であると思うので、私はこれを無くさないでほしいし、結果的に無くならないとも思う。

  過剰労働者には賃金を上げるべきだと思うが、賃金を上げたとしても、さらにそれ以上のサービスをするところが、日本人のすばらしい気質であると思う。

 昨今の保育士や教師の暴力事件も、根底には低賃金での過剰労働に原因があると、個人的には思っている。暴力は絶対にだめであるが、暴力だけに焦点を当てて終わってしまってはいけない。過剰労働者への賃金を増やすことが、結果的にこのような事件を防ぐことになると思う。首相の年初スピーチも賃上げに言及していたが、もっと踏み込んだ対策を期待したい。

 年寄りは低賃金で出来るだけ長く働けばいいし、過剰労働者はもっと高賃金とし、そしてサービス業は大いに日本人のサービス精神を発揮してほしいと思うのである

books.rakuten.co.jp