やすぴか日記

日常の出来事と過去の思い出の記録

かけがえのない愛もある(父の残したコラム④)

 亡き父が残したコラムの原稿をブログ上に残し、それに対する補足と感想を述べたい。その4つ目を掲載する。

<かけがえのない愛もある ー妻恋の歌ー>

『Hさんは長崎の人である。原爆で妻子を失い、続く胃潰癌での長崎入院で職を失い、同期の世話で名古屋に来られ、偶然に私の上司になられた。私は実の子のように可愛がられた。或る冬の朝、極端に不愉快な顔で「昨夜は電車を乗り越した。部屋に帰りついても腹立ちのやり場がなくて悲しかった」と言われた。四十年後、当時のHさんの年になって電車を乗り越した私は、反対側ホームで、Hさんのなげきが「妻恋の歌」であることに気がついたのである。』(父のコラムより)

 この文章を読み、昭和2年生まれだった父は戦争時代を経験し、若い頃はまだ戦後間もない時代で、父は戦前生まれであったのだと、恥ずかしながら初めて認識した。しかし、父からは戦争時代の話は、一度も聞いたことがない。

 もはや戦争経験者は数少なくなり、それを肉声で伝える人がなっていることに、寂しさと不安を感じる。昨今の日本のオール与党化や軍事費増強のニュースを聞くと、再び過ちを起こさないことを祈るばかりである。

 ところで、文中のHさんは、本を読んでいて乗り越したのか、眠っていて乗り越したのか、理由はわからないが、それを家に帰って話をしたり、愚痴を言う相手もいないのである。

 私は帰ったら妻がいることに感謝している。一緒にいるとケンカをしたり、粗相をすると怒られたり、機嫌が悪いと当たられたりすることもあるが、いないとそれさえも無いのである。普段は優しい妻と、死ぬまで一緒に仲良く過ごしたいと思う。

 ちなみに、私が電車を乗り越す場合は、飲みすぎて寝てしまう場合だけなので、妻は先に寝ているだけの話である。