やすぴか日記

日常の出来事と過去の思い出の記録

思いやりは生きている ー皆さんにしあわせをー(父が残したコラム⑧)

 亡き父が残したコラムの原稿をブログ上に残し、それに対する補足と感想を述べたい。その8つ目を掲載する。父のコラムは今回で最終回となる。

 このコラムが書かれたのは35年程前で、父がちょうど今の私と同じくらいの年の頃であろう。この文章に出てくる登場人物は、初老の男(父)とおそらく高校生くらいの少女の二人である。場所は名古屋市のビジネス街で、雪が少し積もった、冬の日の話である。

 時代が移るにつれ、純粋な心は失われてしまったと、いつの時代も言われる。昨今も、SNSや様々なメディアで他人の誹謗中傷や些細な失敗への非難が行われ、ネット社会や新型コロナの影響で、人間関係が希薄になってきたと言う人もいる。

 しかし、人間本来持っている優しさや他人を思いやる心は、簡単に無くなるものではない。昔も今も、父のこの時代も、そしてこれからも、純粋な心は失われることはないと思う。この登場人物の二人のように。

 <思いやりは生きている ーあの少女にしあわせをー>

『めずらしく雪の全市が白い。地下鉄新栄駅を外へ出た私は、運よく来た少女に「手術でしゃべれません道を教えて下さい」と書いたカードを出した。少女は「待ってってね」と言い小走りで十字路に戻り、信号待ちの車と話して帰るなり息をはずまして説明してくれた。一瞬少女の顔は夕映えに輝いた。完全武装の私を見て、少女はクックと笑って「おじさん元気でね」と言って走り去った。私の胸はほのかなあたたかさでいっぱいになり、思わず天に祈った。「あの少女にしあわせを」』(父のコラムより)