やすぴか日記

日常の出来事と過去の思い出の記録

Gの悲劇

 この時期になると思い出すのが「G」との遭遇である。今のマンションに引っ越してからは、気密性が高いせいか、妻が食べ物の後始末をしっかりしているせいか、ほとんど遭遇したことがない。数年に一度、小さいものが現れることがあるが、退治した後は出なくなるので、おそらくどこからか迷い込んだと思われる。しかし、実家にいた頃や、一人暮らしをしていたころは、ひと夏に数回は遭遇していた。思い出して書いていると気分が悪くなる話である。

 実家にいる時に覚えているのは、小学生か中学生だった頃、Gが子供部屋に出現し、部屋の中を飛び回り始めたことがある。最初はカブトムシかクワガタムシが外から飛んできた(そんなわけない)のかと思い、蛍光灯に止まったときに、それがGだとわかり、新聞紙を丸めて立ち向かおうとしたところ、急に私の顔に向かって飛んできたのだ。うわー!と叫んで部屋を飛び出し、ふすまを閉めた。もう部屋に入れないと泣き叫んでいると、母親が「男のくせに何言ってるの!」と言って、ふすまを開けて入っていったとたん、「きゃあー!」と叫び声を上げたのだった。

 一番恐ろしかったのは、会社の寮に住んでいた頃の話である。寮はちょうど会社の食堂の前に建っており、まさにG出現にぴったりのシチュエーションである。ある日ベッドで寝ていると、夜中に顔がくすぐったかったので、寝ぼけながら手で顔を払ったら、手応えがあり、ぽたっと床に何かが落ちた。顔の上を歩いた感触と払った手応えから、はっと思い、急に目が覚めた。これはまさか!と急いで電気を点けると、まさに予想していたとおりの動きをしたものが床から壁に走った。倒さないでは寝られない。すかさず新聞紙を手に取り、物陰に隠れているのを待ち伏せ、時間がかかったが、なんとか倒した。

 安心して電気を消して寝かかったところ、なんと先程のデジャブーか、また顔の上を何かが走った。先程は確実に倒したはずなので、別のものである。私の顔に何かおいしいものがついているのだろうか。これも苦労して退治して、ホッとして電気を消そうとしたら、なんとさらにもう一匹壁にいるではないか!いったいどうなってんの?

 当時は寮の部屋にエアコンがついていなかったので、窓を開けて寝ていたため、外から入ってきたのだ。3匹目も倒すしかないと新聞紙を振りかざしたら、殺気を感じたのか、窓から外に出て壁を伝って上へ行ってしまった。私は上階で寝ている方の無事を祈った。この一晩3連続G出現事件を、「Gの悲劇」と呼んでいる。

 あの姿かたちや予測できないすばやい動きと、生命力の高さが人を恐怖におとしいれる。昔に比べ今の殺虫剤は、一吹きで瞬殺できるものがあり、家庭でこれを使っても大大丈?と思うくらいの効き目なので、今はこれをお守りに置いてある。最近は存在を忘れるくらい遭遇しなくなり、平和な毎日が続いている。とにかくもう二度と出会いたく無い。読んで気分が悪くなった方、どうもすみませんでした。