やすぴか日記

日常の出来事と過去の思い出の記録

「死は存在しない」ってどういうこと?

 「死は存在しないー最先端量子科学が示す新たな仮説ー」田坂 広志(光文社新書)を読んだ。本書は、東大卒で原子力工学の博士号を持つ著書が、最先端量子科学の「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」により、「科学」と「宗教」を融合して、」「死」についての仮説を唱えた書である。

 『この宇宙に普遍的に存在する「量子真空」の中に「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれる「場」があり、この場にすべての出来事のすべての情報が「記録」されている』という仮説で、「臨死体験」「幽体離脱」「前世の記憶」「占い」「予感」などの不思議な出来事は、「ゼロ・ポイント・フィールド」に繋がることにより引き起こされているとのこと。したがって、『肉体の死後、我々の意識は、その中心をゼロ・ポイント・フィールド内の「深層自己」に移し、生き続けていく』との考えである

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 この説明だけだと荒唐無稽でよくわからない話のようだが、本書の中では順序立てて、わかりやすく説明しており、それなりに説得力があり、とてもおもしろかった。結局は仮説に過ぎないのであるが、死に恐怖を感じている方、肉親の死を悲しんでいる方、死にたいと思っている方には、少しでも救いになる本ではないかと思う。

 様々な宗教は「死後の世界」があるとしており、キリスト教は「天国」、仏教は「極楽浄土」、イスラム教は「ジャンナ」と表現しているが、説得力のある説明ができていない。一方科学は、「死とは無に帰すること」と主張しており、どちらかと言えば、私の考えもそうである。

 今求められているのは、「人類全体の意識の変容」や「人々の価値観の転換」であるという。そのためには、この決して交わることがなかった「宗教」と「科学」の両者の主張に対して、著者はその架け橋を渡すことをめざしているという。

 この本を読んで、手塚治虫の「火の鳥」の世界観との共通性を感じた。「火の鳥」は「輪廻転生」の考え方をベースにしているのではあるが、肉体の死後、人間の「自我意識」は「超自我意識」へ変容し、「宇宙意識」へと拡大していくとの著者の主張は、まさに「火の鳥 未来編」で表現されていた世界と似ている。同作の最後に、宇宙生命(コスモゾーン)と同化していくシーンが描かれているが、まさにこのイメージと同じであると思った。

 私は、稲森和夫、出口治明丹羽宇一郎の3人の偉大な経営者の著者をよく読むのだが、彼らの著書には共通して、実現したいことへの強い思いを持つと、それは必ず実現するとの内容が書かれている。ここまで昇りつめた人は、とことんやりつくし、考えつくしたときに、成功に導かれたり、すばらしいアイデアが降りてくるという。それは、「ゼロ・ポイント・フィールド」に繋がった瞬間なのであろうか。

 もしかして、何千年、何万年後に人類が進化して、「ゼロ・ポイント・フィールド」に容易に繋がることが出来るようになるかもしれない。その時、「なんだ、そうだったのか」と思うときが来るのだろうか。その時は、私はもういないけど。いや、「死は存在しない」のだった。