やすぴか日記

日常の出来事と過去の思い出の記録

「愚かな薔薇」を読んだら萩尾望都が読みたくなった

 「愚かな薔薇」(恩田 陸 徳間書店)を読んだ。恩田陸は私の大好きな作家で、ほとんどの作品を読んでいる。恩田陸は、作品の幅が広く、学園、ミステリ、ホラー、SF、ファンタジー、演劇・音楽など、あらゆるジャンルの作品を手掛け、それでいて、どれも読みだしたら止まらないほどの面白さである。

 恩田陸の作品は、初期の名作「六番目の小夜子」や「夜のピクニック」、ロングセラーの「ドミノ」、直木賞を受賞した「蜜蜂と遠雷」など、どれを読んでもはすれがない。数多い作品の中で個人的な好みは、「MAZE」「クレオパトラの夢」「ブラック・ベルベット」のウイルスハンター神原恵弥3部作、ゾワゾワする静かな恐怖を感じる「月の裏側」、歴史を元に戻すために過去に戻って二・二六事件を何度もやり直す「ねじの回転」、日本国内の独立国家<途鎖国>で特殊能力者が戦いを繰り広げるアクション「夜の底は柔らかな幻」である。ちょっと一般の評価とは違うか?
 「愚かな薔薇」は、主人公の少女が「磐座村」という母方の故郷のキャンプに事情を知らずに参加する。ある適性を持った少年少女は、夏のある時期にこの地に立つと徐々に体が変質し、歳を取らない体となる。その代わりに他人の血を飲まないと死んでしまうという、吸血鬼を彷彿とさせる設定である。しかし、そのキャンプの目的は、人類を救うために宇宙へ旅立つ「虚ろ船乗り」を育てることであった。吸血鬼ホラーかファンタジーかと思わせながら、最後は壮大なSFで終わるというところは、恩田陸らしい予想のつかないストーリー展開だ。

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 ネタバレになるが、変質体になるというのは、意識が変容し、変容した意識は自在に実体化できるようになることだった。そして、変質体でない人の意識もダークエネルギーを使って星間移動させることができるようになる。肉体が死んで意識が生きているこいう設定は、以前読んだ「死は存在しない」に通じるものを感じた。

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 ところで、この本の表紙は期間限定カバーであるが、漫画家の萩尾望都がイラストを書いている。タイトルと相まって、萩尾望都の名作「ポーの一族」を連想させる。萩尾望都は、「ポーの一族」「トーマの心臓」「11人いる!」など、子供のころに姉が読んでいたものを読んでいたので、とてもなつかしい。

 「愚かな薔薇」を読んで、さらに表紙のイラストを見たことで、萩尾望都を久しぶりに読みたくなった。調べてみると、「ポーの一族」も、私の好きな「百億の昼と千億の夜」もデラックス版として最近発行されていた。いずれも読み返すと、子供の時に読んだ時とまた違った印象を受けるであろう。すかさず、ポチッとクリックしてしまうのであった。