やすぴか日記

日常の出来事と過去の思い出の記録

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」へ行く③〜未完成という完成品

 ここまでの展示で、アントニ・ガウディの素晴らしさを実感した我々は、ついに第三章「サグラダ・ファミリアの軌跡」のコーナーに足を踏み入れた。このコーナーは、サグラダ・ファミリアのこれまでの建設の軌跡や、全体の構成がわかる図面や模型、外観を彩る彫刻などが多く展示されていた。

 目を引くのは、サグラダ・ファミリアの全体模型である。ガラスに囲まれて、四面から見ることができる。サグラダ・ファミリアは入り口が3箇所あり、現在観光用の入場口となっている「降誕のファザード(正面)」、その反対側の「受難のファザード」、そして完成すれば正式な聖堂の入口となる「栄光のファザード」である。

 全体の模型以外にも、柱、彫刻、尖塔などの各パートの展示がある。それぞれが模型の展示とパネルやモニターで説明されて、一つ一つの奥の深さがわかった。

 例えば柱の場合、すべての柱は断面が星形になっており、8星形の場合4mの高さで1回転させると16星形になり、次に6mの高さで1回転させるとその32星形、さらに7mの高さで1回転させると64星形となり、16mの高さまで続けるとその断面は円柱に近づく。説明を読んでも、模型を見ても、なんだかわからないが、すごいということはわかった。

 塔の先端を飾る彫刻や、それぞれの門に飾られている彫刻の展示もあり、人体や動物の彫刻はリアリティにあふれている。ちなみに、外尾悦郎氏が制作し、現在の石造に置き換わるまで「降誕のファザード」に実際に展示されていた、非常に貴重な「歌う天使たち」の石膏も展示されていた。

 また、ドローンを使って高所から撮影した外観や、建物内部の映像が大画面で流されており、色鮮やかなステンドグラスは素晴らしかった。特に聖堂は、どのように光が射し込むかを研究し、自然光をうまく取り組む工夫がされているとのこと。

 「サグラダ・ファミリア聖堂の建設はゆっくりとしている。なぜなら、この作品はご主人(神)が急がないからだ。」

 最後の第四章では、「ガウディの遺伝子」として、ガウディが影響を及ぼした設計原理や思想、現代美術作品が紹介してあった。

 私はこれまでサグラダ・ファミリアにあまり関心がなかったのだが、今回の展示会を通して知れば知るほど興味が湧いてきて、バルセロナの現地で現物を見たくなってしまったほどである。

 「ガウディとサグラダ・ファミリア展」は東京近代国立美術館での展示は9/10までだが、この後9/30〜12/3に滋賀の佐川美術館、12/9〜2024/3/10に名古屋市美術館で巡回展示されるとのこと。私もついて行って巡回しようかなあ。

 サグラダ・ファミリアは、完成が近づいてきたと言われているが、未完成であることも魅力の一つではないかと思う。個人的には永久に未完成であって欲しいと思ってしまう。そう、サグラダ・ファミリアは、未完成という完成品なのだ。

 映像のラストで、ガウディが語った言葉が紹介されていた。「この聖堂を完成させたいとは思いません。というのも、そうすることが良いとは思わないからです。このような作品は長い時代の産物であるべきで、長ければ長いほど良いのです」