やすぴか日記

日常の出来事と過去の思い出の記録

極上わらび餅の思い出

 最近わらび餅がちょっとしたブームなようで、抹茶わらび餅や飲むわらび餅などもあり、高級なわらび餅がテレビで紹介されたり、通販で買ったりできるようだ。しかし、私の記憶の中にあるわらび餅が、これまで食べたわらび餅の中で一番美味しいわらび餅である。しかし、それは二度と食べることができない味である。

 私が幼少期の頃は、今のようにスーパーも多くなく、コンビニなどあるわけもなし、屋台を引いて売りにくるものが結構あった。豆腐屋は「と〜ふ〜」とラッパを吹いてやってくる。焼き芋屋はマイクで「やーきいもー」と今でもお馴染みのリズムで歌いながらやってくる。

 その中のひとつにわらび餅屋があった。日曜日の3時頃に「チリン、チリン」とベルの音がすると、近所の子供達は「わらび餅だ!」と言って、母親に小銭をもらい、屋台に殺到する。たしかその頃は20〜30円だったと思う。わらび餅の入れ物は、薄い緑色かピンク色で船の形をしたウエハースのような生地で出来ており、それをお皿代わりに半透明のわらび餅が10個ほど乗っかていて、上からきな粉と黒蜜がかかっている。

 わらび餅は冷たく冷えていて、食べると幸せな気分になる。わらび餅を食べた後、きな粉と黒蜜がしみこんだ船のウエハースをかじると、香ばしさとコクのある甘さが口に広がる。無くなってしまうのは名残惜しい。食べ終わった後の満足感は言い表せない。

 ネットで調べると、今でも全国的に屋台でのわらび餅の移動販売はあるそうで、愛知や大阪ではわらび餅の歌を歌いながら来るところが多いみたいだ。

 最近は様々なスイーツがあり、当然何を食べてもおいしいし、有名店のスイーツもお取り寄せができて、お金を出せばいくらでもおいしものが食べられる。当時のわらび餅を今食べると、それほどおいしくないかもしれない。しかし、食べ物があふれかえっている今と違い、当時は素朴な味で貴重はおやつである。そのときに体験した「おいしい」味の記憶は、今食べているスイーツに負けないくらいの、極上スイーツなのである。